ボトラーズブランド 1
- 2011.10.25 Tuesday
- 00:00
「ブログに書いてあったボトラーズって何ですか?」と聞かれ、
そうですね、あらためて入門者の方には不親切な文言が多かったことを反省致しました。
なまじ経験を重ねると、つい独り善がりな解説で悦に浸り自己満足で終わる、なんてことが増えてまいります。
さりとて、かのような質問はぜひ店での会話で、それこそがBarの醍醐味、とも思うのですが、
それにしても基本的なことや、あるいはいまさら聞けないあんなことやこんなことを綴るカテゴリーがあってもよいかな、と。
そんなわけで、「いろは」のカテゴリーを新設してみました。
言っても使い回しのお定まりにならぬよう、それなりに独自性というか「らしさ」を意識するつもりではありますので、
マジでガチな「いろは」についてはウェブなり書籍のそれで確認していただくか、あるいは「Bar道」のほうに綴るとしても、
念を押しておきますがBarで「知らない」は恥でも何でもありません。
お耳を傾けて頂ける準備さえあれば、おじさん頑張っちゃう準備はいつでも出来てるよ、でございます。
むしろ恥ずかしいのは「知ったかぶり」です。
中でも一番困るのは、間違った情報を振りかざされた挙句、話を聞く気も無いような方。
それも特に、強引な同意を求めてこられたり、見当違いのダメ出しをされるようなお客様には太刀打ちできません。
「知らないんですけど」「分からないんですけど」なんて言われたらキュンキュンしちゃいますよ。
キュンキュンて・・・。
いえ、前置きが長くなりました。
「ボトラーズブランド」その1
主にシングルモルトスコッチウイスキーに関連して飛び交うことの多い単語ですが、
実際のBarでは「ボトラー」「ボトラーズ物」のような呼称がよく使われます。
一口にボトラーズと言っても「インディペンデント系」だの「ボトラーズ系」だのと、その詳細や体系は中々に複雑なので、
ザックリバッサリ実用的な「だから何?」な要点だけかい摘んで説明いたします。
シングルモルトスコッチウイスキーの場合、おおむね蒸留所名=酒名。
蒸留所で造られ蒸留所から販売されるボトルを「オフィシャル」と称します。
例として日本でも有名な「ザ・マッカラン」(以下マッカラン)を挙げましょう。
マッカラン蒸留所で造られ、マッカラン蒸留所が熟成・管理、マッカラン蒸留所が瓶詰めし販売したボトルは、
「オフィシャルのマッカラン」。
実際の瓶詰め等、細部の作業は外部業者なりグループ企業に委託していても構いません。
とにかくマッカランが造ってマッカランが売る、その全てをマッカラン指導の元に行われていれば、それはオフィシャル商品なわけです。
これに対して、マッカラン蒸留所が造った原酒を買い付け、あるいはこんな原酒にしてくれと要望することもありますが、
独自に熟成、管理、瓶詰めして販売したものがいわゆるボトラーズブランドです。
これが例えばボトラーズブランドの大御所「ゴードン&マクファイル(以下G&M)」が一連の工程を成したとして、
こうして世に出たボトルはボトラーズブランド「G&Mのマッカラン」。
この場合でもG&Mは指示を出していただけで実際のところその作業の全ては他の業者が行なっていたとしても構いません。
それでもマッカランと名乗れるのです。
「で、だからなんなんだ?」と言えば、これは「音楽に例えると分かりやすい」ですか?どうですか?
つまり、曲(原酒・製造元)は一緒だけど歌手(管理・販売業者)が違うようなものなのです。
シンガーソングライター・マッカランが作った曲「マッカラン」をオリジナルとし、同じ曲を違う歌手、
この場合はG&Mですが、大御所歌手G&Mが独自にアレンジして発表するカヴァー曲「ザ・マッカラン G&Mヴァージョン」のようなもの。
「俺はやっぱりマッカランの歌う「マッカラン12年」が最高だね。」
「いやいや、G&Mが出した「マッカラン16年 フューチャリング・バーボンカスク」もイケてるよ?」
「それを言うなら本家自らアレンジした「マッカラン10年 カスクストレングス・リミックス」だって」
「でもでも・・・・」
と、原曲が同じでも個々の歌い手やアレンジの仕方によって様々に変化する音楽を楽しむかのごとく、酒を愛でる。
Barのウイスキーラヴァーズ達はそんな楽しみ方をしているわけです、はい。
注意点を述べるとするなら、ボトラーズブランドにはオフィシャルのそれに比べ比較的安価で希少なボトルが多いことや、
本家様がなかなか思いつかないような大胆なアレンジを楽しめることなどが特徴とされますが、
もちろんのことながら、必ずしも本家より優れた歌唱力が毎度約束される訳ではありません。
個々の好みもあるでしょうし。
しかも、「らしい」か「らしくない」かの保証すら無く、これに関しては一長一短であるとはいえ、
中には「原曲の原型ぜんぜん無いじゃん!悪い意味で!」とか「もはや歌としていかがなものか?」などと、
ビックリするほどの大ハズレをつかまされる場合だってあります。
さらに、そもそもが樽単位で買い付けた原酒をボトリングする性質上、
特別意図した訳でなくとも出すボトル出すボトルがいちいち少量生産・限定商品になることが当たり前のため、
とあるボトルが気に入ったとて、いつでもどこでもお目にかかれるといった保証もありません。
これを逆手にとって、「お客さん、これは世界で300本しか生産されてないウイスキーなんですよ」などとアピールしてくる店もありますが、
数が少ないからといって一概に価値あるボトルとは限りません。
オフィシャルならある程度分かりますが、それでも「モノ」次第。
ボトラーズブランドの場合は特に当てはまるケースは稀で、
むしろ万本単位で発売される同一規格商品があったら逆にスゴクね?というのが普通ですのでご注意を。
で、先日書いた「ビッグピート」はまた少し事情の異なるボトルとなるため、それはまた今度。