いつまでも歌うわ あなたのために

  • 2018.02.12 Monday
  • 00:33

 

流れ着いた親戚の形見分けだっただろうか?

 

嗜む者などいないのに、我が家には古いクラシックのレコードが沢山あった。

 

小学生の頃、少し背伸びをして聴きかじってみたものの、退屈ですぐに飽きてしまった。

 

しかし、学校の授業であの曲を聴いて以来、クラシックに興味を持ち始め、

 

再び家のレコードを聴くうち、次第に管弦楽の魅力に傾倒し、

 

結果、中学校では吹奏楽部に所属するに至ったのだから、こんな人間のしょうもない人生ではあるが確かに心を動かすほどの影響があった、

 

あの曲とは、

 

そう、

 

ホルストの組曲「惑星」である。

 

タイトルとイメージの合致。

 

子供にもわかりやすいメロディアスでスリリングな展開。

 

絶妙の緩急。

 

雄大なスケール感。

 

小さな子供部屋で目を閉じて果てしない宇宙を夢想するのが大好きだった。


自分もこの「音」に携わることができれば、あるいは誰かの心を動かせるのかもしれない、と思った。

 

個人的には以上のような経緯があったからこそ、

 

だから、

 

この「惑星」から一部の内からそのまた一部だけを抜粋し、あまつさえ全く無関係の歌詞を添えた「例の歌」が発表された時には、

 

自分でも驚くほどの怒りが込み上げてきたのを憶えている。

 

汚された。

 

侵された。

 

踏みにじられた。

 

奪われた。

 

あの頃は、事あるごとに様々なところで聴きたくもないこの歌が流れて来ては、その都度、発狂したくなるほどに心が疲弊していたものだ。

 

思い出してオリジナルを聴き返すたび、ヤツの声がフェードインしてきやがるもんだからオリジナルさえ聴けない身体になってしまった。

 

「えーびーでー♪」クスクスッ

 

うあぁぁぁぁぁぁぁl!!

 

 

あれからもう十五年。

 

今、私は再びあの歌と対峙した。

 

仕事を終え、家に着くやほぼ無意識につけたテレビの中で、今時の若い娘さん方の何とかいうボーカルユニットやらが、例のその歌をカヴァーしたとかなんとか、そんな芸能ニュースと出くわした。

 

はじける様な笑顔で「みなさん聴いてくださいね!」とはしゃいでいる。

 

不思議と私には、あの時のような怒りはなかった。

 

しかし、その激情にかわって抗いようのない絶望感と、

 

そして同時に、単純な、素朴な、一つの疑問、いや質問を投げかけたい、問いたい、とする欲求に駆られた。

 

そもそもの話しだ。

 

私は別にクラシックでなくとも誰かの曲に歌詞をつけて唄うことや、ましてやカヴァーだなんだが悪いとは微塵も思っていない。

 

だが、

 

このホルストの曲だけはワケが違う。

 

肝心なところだ。

 

大事なところ。

 

いいか?

 

なにしろ当のホルスト本人が遺言書にまで「頼むからこの曲を勝手に改編とかしないでくれ」と書き残している作品なのだから。

 

ここだ。

 

要点は、

 

論点は、

 

この一点、

 

これについていったいどう考えているのだろう?

 

最初にこの「歌」を作ったヤツは、あれはもう完全なる悪人なのだろうからいい。

 

「良い」、ということではなく、どうでもという意味で「いい」。

 

あからさま過ぎて隠しきれてないウソの滲み出た怪しいデビューまでのエピソードの数々を鑑みるに、彼女もまた汚い連中に仕組まれた可哀相な犠牲者の一人、

 

などと擁護はできない。

 

音楽一家に育って音大に入って様々な権利関係を踏まえた上で曲をイジりたおして商品化するにあたって「え?そんな事実があったんですか?」なんてことはあり得ないならば全てを知った上で手を組んだ、つまりは一味でありただの悪党だ。

 

故人の願いや想いなど無視し、創造者に対する敬意も、表現者としての矜持もなく、法に触れなければ、罰則がないならば己の名誉と利益のために手段を選ばず、そのくせ外面だけは「いかにも」な振る舞いを続けておいて、心の中では舌を出している、

 

そういうことができる、

 

そういうことが上手い、

 

そういう人間なのだろう。

 

問題は彼女達だ。

 

カヴァーを笑顔で歌っていたうら若き彼女達。

 

イジワルで言っているのではない。

 

本当に純粋にただ聞いてみたい。

 

どこまで知っている?

 

いや知らないのか?

 

知らないのならともかくも、

 

知っているならなおさらに・・・。


 

どうして、

 

私は、

 

そう思ったのだろう?

 

娘どころか伴侶すら得られずにここまで来た私だが、勝手ながらに芽生えた、これが父性というものなのだろうか?

 

お父さん、オマエにちゃんと考えがあるなら反対はしない。

 

とにかく何をどう考えているのか?

 

聞かせてくれないか?

 

「えー知らなかったー」

 

「だって仕事だもん」

 

「うっさいボケ」

 

いかなる回答が返ってきてもいい。

 

私はただ、

 

聞いてみたい。

 

問うてみたいのだ。

 

彼女達の良心に。

 

そう思った。

 

思ったのだ。

 

そして、

 

いかなる回答が返ってきても、

 

私はそれを聞いて、

 

たぶん、

 

おそらく、

 

怒るのだろう。

 

テメーコノヤロー!謝れ!オレとホルストにまず謝れ!

 

いや、結局キレるんかーい。

 

そりゃだって嫌だもん。

 

もしもドラゴンボールを全部集めた級のミラクルな願い事がたった一つだけ叶えられるとしたら、

 

惜しむことなく、私はこの歌を無かったことにしたい。

 

わりとマジで。


でも、そんな魔法みたいなことなんてありはしないから、

 

奪われた瞼の裏の銀河は、もう戻らない。

 

コメント
必ずしも無知=無恥ではないと思うのですが、無自覚と言うのは一番性質が悪いかもですね。
影響力が大きければなおらさのこと。
「与えられる事には感謝を 与える事には責任を」忘れない心を持ち続けたいものです。
  • ichidai
  • 2018/02/12 4:02 AM
惑星の木星ですが、問題の所よりは、出だしの数十秒がTVでよく流れていたので覚えていますね。
なのでフレーズは覚えているけど、いつ誰の作品かずっと分からなかったという。

問題の箇所については、そもそも曲の改変や演奏に厳しい制約を設けていた作者自身が
オイシイ所取りしてさらにボーカル付けて別の曲として仕立てたのがいかんわけで。
時代背景もあり大受けにウケた挙句、作者の手を離れて楽曲が独り歩きしてしまった。

ホルスト様におかれましては、草葉の陰で♪もーどうにもとまらない、って歌ってるんじゃないでしょうか?
  • watch
  • 2018/02/12 12:18 PM
特典の為に同じ楽曲が入ったCD何枚も買わせるよりまあまあこっちの方が悪質
  • しゅとういん
  • 2018/02/12 12:31 PM
>ichidaiさん

おっしゃる通りですね。

仕事とは直接なり間接的でも、過去の人に支えられ、今の人と交わり、未来の人に影響を及ぼす生き方そのものを言うのであれば、

必要なのは「感謝」(私はよく「敬意」と言いますが)と責任です。


>watchさん

あらためましてスゴないですか?

「さぁ今夜唄っていただくのは作曲者自らが遺言書にまで改編をしないでくれと綴った想いを踏みにじり、世界的名曲に抽象的でそれっぽいお花畑な歌詞を勝手につけてみたら大ヒットしちゃって笑いが止まらないあの歌です」

って。


>しゅとういんさん

問題視されないどころかこの期に及んでカヴァーまでされている意味が本気でわかりません。

悪質、というか明確なる悪事やん、こんなん。

  • サヰキ
  • 2018/02/12 7:19 PM
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