シェイクで空気を含ませる?

  • 2011.10.30 Sunday
  • 00:00

「いろは」に相応しいか否か、ちと迷いましたが、


「シェーキングってカクテルに空気を含ませてまろやかにするためなんでしょ?」


という質問をいただきましたので、こちらに書いておきますね。


結論から言ってしまえば、それは限りなく嘘に近い、Barでよく聞く迷信みたいなものです。


以下、長くなりますので時間のない方はこれだけどうぞ、


「ペットボトルの水とかお茶って振るとまろやかで美味しくなるの?」ってことです。



さて、ここからはダラダラと、


確かにシェーキングという処方の副産物として液体内にいくらかの空気は含まれますが、


これが味に影響する割合、それも「まろやか」なんて美味しさに直結するような効果は極めて薄いです。


簡単な話、まずレシピ通りに合わせた酒なり材料をそのまま味見してみます。

問題は空気の有無による味の変化なので、マドラーなどを使って俗に言う「切るように」程度は混ぜてから味をみましょう。

分離状態で確かめておいて振って混ざって味が変わった!なんて痛いことを言わないように。


次に空のシェーカーにそれを放り込んで、ここに氷を入れず、ただただ振りまくります。


何でしたら普段のシェイキングの2倍でも3倍でも時間をかけて振りまくって味見してみます。


振る材料を全て投入せず、少し残しておけば比較も容易ですよね。


お客様の中で、家で試してみたいという方はミニチュアボトルなんかでやってみてもいいかもしれません。


で、「空気が含まれることによってまろやかに変化するという理論」が正しいのであれば、


特に「酒の角が取れる」と表現されるようなアルコール感の変化が起きるのであれば、両者には著しい差があって然るべきですが、


結果はほとんど変化なしです。


ごく一部、粘度の高い材料で構成されたレシピや、ワインに代表される醸造酒とか、蒸留酒の中でもウイスキーなど空気との接触で芳香成分などが変化しやすい材料を含んだものは、


違いを感じ取れるものがあるのは確かですが、


それでもその他、多くのケースで、まろやかと形容するに相応しいか?美味しくなったと言えるか?と聞かれれば、そんなことはありえません。


「美味しさの秘密は空気です」なんて、いかにもな言葉に騙されないようにしましょう。


イメージだけで納豆やメレンゲ、寿司のシャリのそれなど、料理関係で言われるところの「空気味」なんかと一緒にして、ありうることだと疑わず鵜呑みにしてませんでしたか?


実際に意味のある飲料と空気の関係、例えば紅茶や珈琲を入れる際の水に必要と言われる酸素量だとか、


ワインのデキャンタージュやベネンシアを用いたシェリーの提供などは、その効能と目的自体、カクテルのそれとは大きく異なります。


なんでもかんでも強引に結び付けてはいけません。


だいたいそれらも、モノの例えで空気という言葉を使ってはいますが、その多くは空気との接触自体か攪拌、


あるいは物理的な空間を意味してるものがほとんどで、


ショートカクテルでわずか60mlを分母とするような純粋な液体に近い存在を扱うシェークなる動作には当てはまりませんし、


そもそも液体に含まれる気体の溶在率を高めるには、温度を下げ、更にその気体の分圧を高めるしかありません。


しかも気体の溶在飽和量は液体の・・・と、難しい話はさておき、


わずかながらに起こる変化が相乗効果の一要因であることは否定できませんが、


シェーキングによってカクテルをまろやかに思わせ、美味しく感じさせる最大の要因は圧倒的に「加水」と「冷却」です。


これを体感するには同じ材料を用いて、「水を加えただけのもの」「冷やしただけのもの」と比較すればよくわかります。


私の場合は色々な組み合わせも考慮して、エアポンプを使った実験や、氷に見立てた保冷剤を用いて加水率ゼロ検証なんてことも試してみましたが、


若かったとはいえそれはやり過ぎですねそうですね。


何にしてもです、とやかく言うより、やってみれば分かること。


そう、やってみれば、ってことは・・・・、ね。


空気まろやか理論者がなぜ多いかというと、つまり、そういうことです。


ちなみにですけど、これ言う人って、自分のシェーキングでは氷がほとんど溶けてないから水っぽくなっているんじゃない、とか、


この振り方は普通のシェーキングよりすごく冷えるんだ、とか言う話も展開する傾向が強いんですよね。


自分のシェーキングで発生する加水量とカクテルの温度を計ったことがあるのか聞いてみたいところですが、


そもそもなにゆえBarってのはこうもハッタリが多いのか?


そしてそんなインチキこそが巷でスゴイと言われているのか?には割に明確な答えもあるのですが、


私も平穏な生活を送りたいのでこのぐらいにしといて・・・。


あらためて質問に対し、私なりの答えを記しておきましょう。


 


「シェーキングってカクテルに空気を含ませてまろやかにするためなんでしょ?」


いいえ違います。


私がシェーキングによって求め、実践するのは「素早い冷却」「充分な攪拌」「適度な加水」の3点を得るためです。


Barなる飲食店舗で、いや、そうでなくともあらかじめ個人で混ぜ合わせておいた酒を販売することは違法行為です。


カクテルとはオーダーを受けて初めて調合を開始することが許されている飲料なのです。(さらっと書きましたが、知らないバーテンダーも多いですね、これ)


これをその場で「加水」と「冷却」という効果を加味しつつ「攪拌」という作業を素早く完遂し、美味しく提供しようとなると、


シェーカーを用いることが最も迅速かつ合理的なため、この道具と技法を使用しています。


もちろん、より良いものを提供しようとなるとそれ以前のレシピの構築を含めた試作・試飲は欠かせませんし、


モノによってではありますが、私の場合は完成形から逆算しての途中の味見もしますけど、ね。

コメント
めちゃくちゃ面白くて参考になりました(≧▽≦) 
ありがとー(≧▽≦)
  • ぱせり
  • 2018/06/12 1:19 AM
>ぱせりさん

ヾ(*゚∀゚*)ノ♪
  • サヰキ
  • 2018/06/12 11:45 AM
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