アブサンの流儀

  • 2015.11.28 Saturday
  • 19:05

これまでのあらすじ・・・アブサン入荷したから飲めばいいじゃない。

ではよろしくないのがこのお酒。

そもそもアブサンは同量から五倍程度の水で割ることを前提とした酒、なのですが、

バーテンダーではなくお客様自身に処方を委ね、その過程自体を楽しんでいただくことまでを踏まえて初めて完結するグラス。

その為の専用アイテムは種類豊富で、

例えばアブサン・グラス、アブサン・ドリッパー、アブサン・ファウンテン、あるいはアブサン・ストリングプレイスパイダーベイビーなど様々なれど、

これが基本にしてこれが核。

まずはこれが無きゃ始まらないけどなんならこれさえあればなんとかなる必須アイテムがこちら。

「アブサン・スプーン」



キリンさんが好きです、でも形から入るのがもっと好きな上に設定マニアでシチュエーションジャンキーで様式美フェチの私がコレを欠いて提供するなど屈辱ならば早速購入したからにはご説明。

今更の方には今更ならば今更聞けない使用法。

アブサン・スプーンも使えないどこの馬の骨とも知れぬ男に娘はやれん!と追い返される前に、

最近の若い娘さんはアブサン・スプーンも満足に使えないのねぇ?と嫁ぎ先で姑さんにいびられないために、

それでは行ってみよう、嫁入り前に覚えておきたいアブサン・スプーンの使い方。


ステップ1「オーダー」

アブサンは明確な飲み方の注文、

例えば水割りとかソーダ割りのような指定がない限りは「アブサン下さい」だけでオーダーが成立する酒。

さすればおのずと最低限、次のようなセットが提供されるはず、

なのですが、シレっと「ストレート?ロック?どのように?」と返されてみたり、

「ウチにはそんなもの無いよ」とか言われたとしても、どっかの喪服の新聞社勤めみたく、

「そんなのは本物のアブサンとは呼べない!」などとケチをつけるような野暮はなさいませんように。

無くて普通、出てきたらわざわざご苦労さんね、の一式がコレ。



1・ストレートで飲むにはやや大きめのグラスに入ったアブサン。

2・皿に載ったアブサン・スプーンと角砂糖。

3・水の入ったピッチャー。

見慣れぬ光景に慌てる必要はナッシング。

「焦るんじゃない、俺はアブサンが飲みたいだけなんだ」

心を落ち着かせたらまずはそのままグラスの中のアブサンの色を愛で、香りを嗜み、一舐め一口と生のままで味わってみるのも一興。

「ふむ・・・なるほど・・・」

意味深に分かったような素振りを演じたら次へ。


ステップ2「セット」

いよいよアブサン・スプーンを実践。

まずはスプーンの柄を持ってグラスにセットしよう。

その際、お好きなようにで構わないけど、後々のことを考えれば、右利きの人はスプーンの柄が左側になるようにしておいた方が良いのはちょっとしたマメな。

さすがはアブサン・スプーン、グラスに乗せてもだいじょーぶ。

専用と言うだけあってグラスの上でも安定するように凹みが設けられているから不器用な人でも「上手に置けるかな?」なんて心配はいりません。

そうしたら続けざま、今度はそのスプーンの上に角砂糖をセット。



ここで砂糖にアブサンを染ませて火をつける、といった手順が無いこともないのですが、当店では基本的にはご遠慮願いたいのです。

願いたいのです。

多くは語らず。

これにて準備完了、用意万端。

さぁ、行こうゼ、アブサンの向こう側へ・・・。


ステップ3「加水」

ピッチャーを手に取り角砂糖を溶かすように上から水を注ぎかけ加水していきます。



ゆっくり、そりゃもうゆっくり、

初めての方にはお売りできない三十代からの基礎化粧品の製造過程のごとく一滴一滴、焦らしプレイで。

言い過ぎましたほどほどで。

スプーンに施された穴から溶けた砂糖と水が落ち、グラスの中で混ざるにつれ、

およそそれが同量から二倍程度に達した頃からアブサンが白濁し始めます。

「うわぁー香草系リキュールの錬金術やぁー」

これが醍醐味。

そのための「アブサン・スプーン」、

なのですが、

はしゃぎたい気持ちはわかりますけどもそこはグッと堪えていただかなければならないのは、

なぜならばこれこそがかの時代、栄華を極めしパリの都の日陰にて、妖精だ悪魔だと人々を魅了し狂わせてきたと言われる摩訶不思議な変化にして魔性と称えられた色彩なれば、

その在り様はアンダーグラウンドでこそ一際画になる禁断の輝き。

基本属性は闇の酒。

いつもダークネス、

だけどテンダネス、

ガラス細工のフィーリングを保ったまま、肩越しにデスノートを持った死神でも見えてきそうな雰囲気を出しつつ、

「退廃的やわぁー」

「ベルエポックっすなぁー」

と心の中でつぶやきながら静かに楽しみましょう。

もののついでに白濁のメカニズムにも触れておけば、

「水を加えると非水溶成分が析出して白濁する」と多くの方が口をそろえてご解説なされてますけども、

だからその「非水溶成分」ってなにさ?ってのと終いには「ニガヨモギガー」「ツヨンガー」言うてるドアホウはさて置き、

これはアブサンのアルコール内に溶け込んでいた「アネトール」が原因で起きる現象。



アブサンを成すには欠かせず、味にも大きく影響しているセリ科の一年草「アニス」なる香草から抽出した、言わばエッセンシャル・オイルの主成分が「アネトール」」でして、

「アニス」の代わりに「スターアニス(八角)」が使われていたとしても同成分が抽出できるからこその代替品ならばやっぱり仕組みは同じこと。



この「アネトール」がアルコールには溶けて馴染み易いものの水には反発しちゃうもんだから、

まぁざっくり言えば油です、油。

熱にもアルコールにも溶けやすく、そうしている内には透明な油が冷ますなり水を加えると白く浮き出て見えるのは、

ちょうどステーキを焼いた後のフライパンがシンクの中で白く固まった脂を浮かせているのと同じようなもの。

実際のところ「アネトール」は甘味が大変強いため、砂糖や甘味料なんかに頼らずにたっぷりの「アネトール」だけを用いて十分な甘味をした「良いアブサン」ならばなおさら、

ロックなんかにすると白濁どころか固まった油分がグラスの中、表面にびっしり浮いてくる、なんてこともありますから、銘柄によっては飲み方のチョイスに注意が必要な場合もあります。

砂糖?

あれは白濁に直接関与するものではなく、水で薄めた分のボリュームを補う役割が主です。


ステップ4「混ぜて飲む」

ここまでの諸々をまるっとまったり堪能したら後はもうスプーンでかき混ぜて飲むだけです。



かき混ぜるとアルコールと水分が均一化され、これで良しと思っていた白濁さ加減が一・二歩手前に巻き戻される場合もありますが、その時は再度水を加えるなり調整して下さい。

いずれにせよ、あなたの好みはあなたのみが知るところ。

水の量、砂糖の溶かし具合、そのスピード、あのタイミング。

何をどうすればこうすればの助言を求められればお力添えはいたしますけども、最終的なスタイルの確立はあなた自身に委ねられています。

結果編み出されたカスタマイズは大いに歓迎。

例えばピッチャーの水に氷は無しでとか常温のそれでとか、もっと大きなグラスがいいとか、砂糖は二個くれとか。

なんにしたって初めなくっちゃ始まらないし分からない。

ガチでアブサン自体がまるっきり初めての方は言ってね?

ちょっとだけ舐めてみていただきますからそれでダメなら止めときましょう、いやホントそういう酒ですし無理は禁物。

イケそうならばまずはお試しあれ。

さぁ、アブサンに悶えるがよいさ、と思うのさ。




あと新入荷。

エミル・ペルノ 「アブサン・ヴィユーポンタリエ」



オマケで紹介していてはバチが当たりそうな現代アブサン界のジャスティス。

先日のねこたんと同じエミル・ペルノが放つ、アブサンの聖地の名を冠したこのボトルは、

アブサンの製法が10あるとするならば、1は工夫、1は革新だとして、7は紛い物と言われる中で、唯一本物にして正統と称される技法を守り、伝統を紡ぎながらもさらなる追求と挑戦までもを盛り込んだ逸品。

商品解説もさることながら、

ことアブサン関連の情報に関しては、探せば私なんかよりよっぽどディープでヤバイお方がゴロゴロしているので今さらここに書くようなこともありませんからあとは自習で。

なにしろお好き過ぎて愛し過ぎならば熱量もハンパなく、呆れた物量と深すぎる内容は、むしろ嬉しい悲鳴だと受け止めてガッツリ学んでみてください。

それにしても入荷以来アブサン出過ぎ飲まれ過ぎ。

なに?そんなに欲してたの?言ってよ?

突如として沸いた当店史上初にして最大のアブサンブーム。

乗るしかない!このアブサンウェーブに!

なの?

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