バーテンダーとバーテン
- 2012.11.01 Thursday
- 00:00
「バーテンダー」。
「バー」は「酒場」、「テンダー」は「世話人」から転じて「優しさ」の意で、
これを略した「バーテン」なる呼称は、
当て所なくさまようロクデナシ「フーテン」と組み合わせて生まれた造語であり、
存在そのものが差別的名称であるため、
現代において「バーテンダー」に対し「バーテン」と呼びつけるのは非常に無礼な行為である。
ってことになってるんです、すっかり。
業界内では。
おそらく大半のお客様からすると、
「え?そうなの?知らずにバーテンさんって呼んでたけど?」ってところでしょうが、
そりゃそうでしょう。
どう考えたって大多数は他意もない、
「リモコン」や「ケータイ」の類と同様の単なる略語であり愛称として使われてきたことは想像に難くなく、
「リーマン」や「スッチー」のようなあからさまな見下し感も無いですから取って付けたように「実は」とか言われても、ねぇ。
過去、それは確かにバーテンダーの社会的立場だの業務内容からして一部の暗黒面をすくい上げ、
侮辱の意を込め「バーテン」なる言葉が創造されたとして、
これを意識的にそういう意味で使っている人が現在にどれだけ存在するのか?と逆に問いたいアナタは間違ってない。
いやさそもそも現在の使用状況から見ても意図も無い自然発生こそが主流で、後付け臭くないか?フーテンとバーテンて・・・。
何しろ「フーテン」なんて言葉を使う人物自体、車寅次郎以外に居やしない現代ならば、
わざわざ風化しつつある黒歴史なんぞ拾ってこないでも放置しとけば一略称「バーテン」として、なんなら親しみさえ加味されて、
かつて含まれていた意味も消失していたであろうものをだがしかし、
現代の「自称バーテンダー」こと「バーテン」に「バーテンさん」などと言おうものなら、
「バーテンダーをバーテンと呼ぶ無知な客」、
「モノを知らない失礼なヤツ」と、
勝手に鬼の首獲った面で喜ぶ輩が増加しつつあるのも著しいのは比較的近年のことなのですが、その理由を説明しだすと、
事細かに、固有名詞まで取り上げながら詳細までを解説できてしまう辺りが私の立場を危うくしかねないのでそこは爽やかにボカしつつ、
もはや「バーテン」なる言葉は使わないのが無難な状況。
つまるところ、過去やら意味やら一切関係無い、
と言うかその辺り受け売りの知識だけでまともに自分の頭で考えた人も少ないでしょうが、
「バーテン」と言うと嬉々として、もとい不愉快になる「バーテンダー」が多く、
彼らはともかくこの世から「バーテン」なる言葉を抹消しようと、
「バーテンダー」を「バーテン」と呼ぶ人間を撲滅しようと躍起なので触らぬ神になんとやらなワケです。
言うだけのことはある仕事してりゃこちとらも文句は無いんですけども、
結局なにが一番問題かと言えば、「バーテン」言われるたびに心の中では舌打ちしつつ、
その場は事を荒立てずスルーしたいやら保身の一心で指摘も説明も無いまま目の前の客だか敵だかをやり過ごし、
後々になってから、あるいは場外で「分かってない」「残念だ」言うてる「バーテン」が多い事実。
それで何がポリシーだ誇りだ?と。
おかげで業界と一般の認識度の差がここまで開いたのでしょうが、
そのぐらいのことは事前に勉強してから「バー」に来いってことか?
おい、それこそ「テンダー」はどこ行った?
もちろん中には立派な志と実現すべき思想を掲げてこれを普及させようと、
真にお客様の為を想い嫌われ役を買ってでもご忠告をするなど、日々ご尽力されている方もいらっしゃるのですが、
いやどれほどいるのですか?
と、不完全なフォローをしつつ、
個人的には淑女が気だるげにこぼす「ねぇ、バーテンさん・・・」なんて語感、
好きだったりするんだけどなぁ・・・。
ま、バーテンダーの何に憧れバーテンダーとなり、何をもってバーテンダーとするかは人それぞれですさかい。