「キジも鳴かずば混成酒」
- 2013.03.03 Sunday
- 22:43
さて、まずは復習を兼ねての話しから。
「醸造酒」=酵母に糖分を分解させて造ったアルコールを含む酒。
「ビール」「ワイン」「日本酒」が世界の三大醸造酒なんて呼ばれてるとかなんとか。
特徴としては素材由来の成分が多く残っているので風味もそれに準じた仕上がり。
度数は比較的軽いモノが多く、それは醸造で造れるアルコールの強さに上限があるので当然のこと。
てことはこれまた必然ながら、開封後、でなくとも味も変化しやすく傷みやすいため、
Barでどこに置いてあるかと言えば主に冷蔵庫だセラーの中。
で、「開けたら空けろ」が基本ね。
して「蒸留酒」。
「醸造酒」を「蒸留」することで造られる酒の総称。
洋酒じゃ「ジン」「ウォッカ」「ラム」「テキーラ」「ウイスキー」「ブランデー」あたりが代表格。
何しろ蒸留という工程を経ているため度数は高め。(ざっくり平均40度ぐらい)
素材の成分もあくまで抽出されたエキスがフレーバーとして閉じ込められてるだけなので、
まぁ、早い話が傷みにくい。
傷まないワケじゃないけどね、あくまでも傷みにくい。
Barの酒棚に鎮座ましましますボトルの面々はこの蒸留酒、
だけじゃないんだなコレが、ってのがさて、今回のお話し。
「混成酒」
ちょっと聞きなれない言葉かもしれないけど、
Barの酒棚はほぼほぼ「蒸留酒」とこの「混成酒」で構成されていると言って過言でなく、
製造方法に由来するジャンル分けなら、
「醸造酒」「蒸留酒」、そして今回の「混成酒」を用いればおよそ全ての酒が分類できちゃうぐらい便利なワード。
焦らさず核心から言っちゃうと、
「醸造酒」あるいは「蒸留酒」、つまりどっちでもいいんだけど、ベースにして「何か」を混ぜた酒のこと。
「混」ぜて「成」るから「混成酒」って、相変わらずまんま。
「醸造酒」ベースの代表格は「ベルモット」「シェリー」「ポート・ワイン」など。
「蒸留酒」ベースだと「これはリキュールです」なんて言われるのが大体そう。
なのだけれども。
えーっと。
「リキュール」の訳が「混成酒」みたいな風潮が強いけど、
「リキュール」も含めて、「ベースの醸造酒or蒸留酒」に「何か」入ってればとにかく「混成酒」。
「リキュール」はあくまでも「混成酒」の一ジャンル。
全ての「リキュール」は「混成酒」の仲間だけど、「混成酒」の全てが必ずしも「リキュール」であるとは限りません。
んーっと。
根本的すぎて基礎的すぎて、
むしろプロの方がワケわかんなくなっちゃってるケースが多々でして、
やたら専門的でマニアックな単語は知ってるのに大きな分類とか大系とか、
そういうところスッポ抜けてることもしばしば。
「ヒトはホモサピエンスです(キリッ」
ええ、哺乳類ですよね?
「ほ、哺乳類・・・?」
みたいな。
例えば「シェリー」。
「混成酒」です。
スペインのワインをベースに造られる紛れもない「混成酒」。
日本の法律上のカテゴリーで言うと「甘味果実酒」。
なのだけれども、
そこいらのバーテンダーに聞けば高確率で「フォーティファイド・ワインです」との答えが返ってくるでしょう。
これはワイン類独自の製造・加工法で分類した場合の名称。
訳すと「酒精強化果実酒」。
独特の熟成工程「ソレラ・システム」なんかについても語ってくれるかも。
間違ってないしむしろ良く勉強してはる。
が、しかし、
逆に「シェリーって混成酒ですよね?」と聞くと「え?」となる人が多い。
「混成酒=リキュール」でボンヤリ理解したつもりになってると、この質問、
「シェリーってリキュールですよね?」に聞こえちゃうからね。
「すごーい」言われたいばっかりで、いかにもな付け焼き刃だけありがたがってちゃ、木を見て森を観ずのお手本みたくなっちゃうのよ、つって。
まぁ、そもそも「混成酒」ってのは海外生まれの酒を持ってきて、
「日本で分類するならこれに該当する」ってカテゴリーなんで、
混乱も生じやすいわけですわ。
試しに「混成酒」を英訳してみると面白い。
「mixed wine」とか「mixed liquor」とか「liqueur」とか「cocktail」とか、
辞書によってバラバラだったりするんだもん何とかしてよ。
つーかこの辺りで「liqueurを日本語にすると混成酒、混成酒=リキュール」ってことになっちゃったんだろうなぁ、きっと。
あとさらに日本には「リキュール類」というカテゴリーはあっても「リキュール」って商品は過去に無く、とかまで言い出すとマジメンドクセーなんで一先ず置いとくけど、そういった経緯も踏まえつつ、
個々の単語だ名詞を丸暗記するより、システムと言うか流れと言うか概要と言うか、
英会話で言えばやたらに英単語を覚えるよりも文法を理解する方が大事、みたいなもん、か?
そうなのか?
そういう意味でもどういう意味だよ?ともかく「混成酒」。
もうこれ以上はいいよ、面倒だよ、って人にもうってつけ。
「醸造酒」がありまして、これを蒸留しますと「蒸留酒」になりまして、
どっちを元にしようと「何か」を混ぜれば「混成酒」でございまする。
全ての酒類はこの三種類の内のどれかに当てはまります、
ってとこだけ押さえといてください。
特徴は、これは一概には言えません、さすがに。
なんせベースからして「醸造酒」「蒸留酒」どっちでもアリなんで、
味から風味から度数から、バラバラですさかい。
以降、原料、熟成法、加工に産地にアレやらコレやらの違いでより細分化され、
呆れるぐらい多岐にわたる分類と、これに伴う名称が出てくるワケです。
「混成酒」に限らずね。
「醸造酒」のアレ。
「蒸留酒」のコレ、みたいな。
そこはまた、個別に潰していきますんで。