昨日の朝方の誘惑と顛末
- 2013.10.02 Wednesday
- 00:20
緊張とは少し異なる高揚感にも似た心のざわめきに戸惑っていた。
飲み込んだ唾の音が聞こえまいかと焦った。
簡潔に、ドキドキしていた、と言えばよいだろうか?
何よりもまずその要因は、不慣れというワケでは無く、
「ただ久しぶりだから」なのだと、ずいぶん恥ずかしくておかしな言い訳を、
誰にするでなし、
自分に説くように言い聞かせて落ち着きを取り戻そうと努めたが、
無理だった。
経験則からくるものではない。
あきらかに、触れずして柔らかいと確信できるライン。
今、目の前であらわになった、
白く艶かしい膨らみの輪郭が、
滑らかな弧を描く優しい曲線が、
これが手を伸ばさずとも触れられるほど間近にあるという現実が、
私を狂わせた。
浮かんでは消える選択肢は確実にその数を減らし、
簡略化されゆく思考が帰結したのは湧き上がる衝動に素直に従うことだった。
すでにこの時点で私は自らの制御を放棄していたのかもしれない。
私を突き動かすように操る者の正体があるとするならば、
それはおそらく本能だ。
手の中にちょうど収まる程よい大きさの膨らみをして、
「そうだ、このぐらいの大きさで良い、ではなくこのぐらいが好みなのだ」
と、余裕の無い割にはそんなことを思いつく自分に心の中で苦笑した。
そっと指を這わせる。
やはり冷静ではないことを思い知る。
それだけですでに、指先から鼓動が伝わらんばかりに私は高ぶっていた。
触れた。
指と曲線の境界線が滲んで消える。
膨らみは思いがけず持っていたその弾力で、かすかに私を拒む素振りを見せつつも、
輪郭に添わせてカーブを描いた私の五指を、受け入れるかのように包み込む。
指の隙間から柔らかさが溢れる。
そして、
温かい。
手のひらに広がる温もりは、私の奥底にまで伝わり、
ゆっくりと頭を痺れさせる。
やわらかい・・・あたたかい・・・。
呼気が、上がる。
指が、動く。
感触を確かめるように少し力を入れ、あるいは抜き、
蠢く私の指の動きに合わせ、膨らみはたゆたうように悶えるように、形を変える。
ゆっくりと、
じっくりと、
ともすればしつこいぐらいに、
慈しむかのごとく優しく愛でていたかったが、
そこで私に残っていた最後の理性の、その欠片が消し飛んだ。
一転、
荒々しく、
貪るように、
膨らみを、
私は、
大きく、
口を開け、
かぶりついた。
「あぁ・・・」
「美味し・・・」
「肉まん」
寒い時期はこれだね。
お外で食べるのが好き。