長すぎる梅雨の影響を頭からかぶって二日と空けることなくうどんツユの中に漂うトロロコンブのようになっては出勤、あるいは帰宅を繰返している近頃の私と言えばすっかり雨に対して過敏に、そして臆病になっていたからこそ抜かりはなかった。
今日は日中に済ませておきたい些末な用事を控えていたため遡ること前日の就寝前から計3ソースより入手した天気予報を元に計画したその行動予定とは、
つまり午後3時から降りだすものと推測される雨を避け、いささか面倒ではあるが少し早め、正午には起床してそれまでには用件を済ませてしまおうとするものだった。
そして当日午後1時。
私はトロロコンブのようになりながら恨めしく空を眺めていた。
とある軒先ではマダム達に「最近よく着ているサラリーマンに腕挫十字固をキメている女子高生がプリントされたお気に入りのTシャツ」をイジられながら雨宿りをする、
といった羞恥プレイを挟みつつ当初の用事が完遂されたのは本来予報では雨が降りだすと告げられていた午後3時のことだった。
眩しいばかりの青空が広がっていた。
続きましては出勤となり、もはや天気予報など女子が合コンに連れてくるという「カワイイ友達」程度の信憑性と断じた私は衛星画像を材料に自ら判断した頃合いをもってして発進するも突然のにわか雨にしてやられることになる。
そう言えば今月はこんな空模様が多くてキツネ界じゃ来年あたりはさぞかしベビーラッシュなのだろうさ、
などとウィットなジョークを想いながらウェットな私は途中いつものビデオ屋に立ち寄った。
ビデオ屋に来る度「今時ビデオ屋とも言わないだろうしヘタをすればビデオなんて知らない世代も珍しくないご時世だし実際ビデオを借りるわけでもないのにそれでも私にとってはここはビデオ屋であってこれからもそう言い続けるのだろうか?」
などと、いつも通りにどうでもいい脳内一人語りをしながら入店したのはむしろ平常運転であって些末な問題に過ぎない。
それとして、ここ最近このレンタル儀式の行程にある変化が生じた。
店員が話しかけてくるようになってきたのだ。
別に迷惑なわけではないが少々葛藤と困惑が続いている。
推測するにこの店においては私が真っ当な映画ばかりをレンタルしているものだから、
「あれ?こちらは以前にも借りられてますが?」とか「これ面白いですよね?」とか「これ良かったですか?」とか、
アプローチしやすいシチュエーションになっているのだろうが、
これを望みお膳立てたのはむしろ貴様の方だろう?こっちは乗ってやってるだけだ、と状況証拠のみからある種の哀れみを持って勝手な判断をされているとするならば、
自意識と被害者意識が強すぎるとお叱りを受けようとて甚だ本心から素直に不本意なのである。
と、すると、
はて、ここで一つアダルトな一本を、いや一本と言わずお得なセットのその全てを、なんならちょっとエゲツない方向のラインナップで編成したスペシャルセレクトでカウンターに持って行ったらいったいどんなリアクションで対応していただけるのか?
あぁ、試しているのかい?
ボクを試しているのだろう?
妄想が止まらない。
妄想が止まらない。
通報しないでください。
そんなこんな、
かくして私は今現在、それでもなんとか無事に出勤を果たしてここに至るのだが、
どうしたものか日付変更線を跨ぐ以前に借りてきた五本の作品をすでに鑑賞し終えてしまい、このどうでもいい日記を書き認めている。
音楽鑑賞でもしようかと思ったが先日、岡村ちゃんの「家庭教師」やケン・イシイの「EXTRA」を聴いている最中にご来店いただき微妙な空気を演出しまったことを反省中の身としては幾分気が引ける。
それでなくとも今の私は「紫陽花アイ愛物語」を聴きたくてウズウズしているのだ。
永い夜になりそうだ。