シャツ。
紳士服では下着に分類されるわけで、
よくあるジャケット着用が義務なんてドレスコードはその場がフォーマルな空間であることの裏返し。
格式とか意識しろよ?シャツは下着ぐらいの常識は頭に入ってる人なりの振る舞いをしろよ?
ってハードルなわけ。
一般的にはそれ単体でちゃんとした「一着」扱いで良いですし、
高温多湿なこの国においては義務教育過程からしてシャツ一枚で制服でございとしている位ですから、
特にフォーマルだなんだとこだわらないならあんまり神経質になる必要も無いでしょう。
やっぱり基本はワイシャツで白一択でしょうが、
まずは言わずもがな清潔であること。
それでいて清潔で嫌が上にも清潔であること。
飲食物を扱いつつ接客する者としてこれさえ守れていれば細かいところはわりと自由でもいいんじゃないですか?
種類やデザインに関しては、それはもう様々だけれども、
そのどれを着ていても受け入れられる環境ができちゃっているし、
組み合わせにしても、例えばドレスシャツには本来、蝶ネクタイにカマーベストがセオリーなんて、最近じゃその限りでは無いようですし、
意図的にシャツのみで着崩してラフな店の演出を狙うのだってありかと。
ただし先に記した通り、フォーマル基準であればシャツオンリーはまずNGな常識からすれば、
そこをあえて上着(ベスト等)無しで押すのなら、自ら当店ラフでカジュアルな店でございますよと強めに主張している自覚は必要です。
そういうところがチグハグなのが一番意味不明でダサイですから。
さて、詳しい知識なんて放っておいても、これだけは知っておきたい実用的ポイントが今回のテーマ。
その人がシャツを着こなせているか?
シャツのこと分かっているか?知っているか?
どこを見られるか?
どこで判断されるか?
それがフィット感。
シャツはサイズ。
マジ、サイズ。
量販店で既製品を買うにしたって「首回り」と「裄丈」(ゆきたけ・首の付け根に当たる部分から肩を通って袖口までの長さ)の数字が必須なことからも分かる通り、
首と袖がポイント。
紳士服の大手チェーンに行ったってS・M・Lじゃないじゃん?
センチ単位で刻んであるじゃん?
そういうことなのさ。
全体的にダボついたオーバーサイズをチョイスしがちな傾向がとにかく強いようですが、
あらためて下着と考えれば分かりやすい?
んなデカパン履いてどうすんの?
イメージはトランクスよりもボクサーブリーフね。
袖に関しては肩から腕を動かすことの多い職種ゆえ、これに支障が出るようでは本末転倒なので、
アームホールから裄丈自体、大きく見積もったとしても、
弛みはアームバンドやガーターを使ってむしろ洒落者演出、って手があるけど、
シャツの着こなしで、特に首元、とにかく首回りがユルユルなんてのは話にならない。
しかもね、もうね、ネクタイ締めてるはずなのに首元に手を差し込めそうなほどガバガバなんて、
それなら丸首のTシャツを着ててくれたほうがいっそ清々しいぐらいにお恥ずかしい。
オーダーメイド、ならそんなこともないだろうけど、どんなに高価な一着だろうと、どんなに有名なブランド物だろうと、
「首回り合ってない」ってだけで大人の装いとしては全てが台無し。
「だってキツイじゃん?」て人は自分に合うシャツ探しを一度真面目に試してみましょう。
「採寸してもらえますか?」
「試着用のカラー(襟)はありますか?」
お店で聞いてみようマジ聞いてみよう。
安物でなくとも自分のサイズに合っていないシャツを適当に選んでいたせいで首、と言うより頸動脈が圧迫されていて苦しかった、
なんてのはよくあること。
しっくりくるシャツを着ると価値観変わるよ?いや本当。
そこまでやっても出てくる違和感やら不満なんかはもうあれだ、
多少は慣れろ、我慢しろ。
努力無くしてオサレ無し。
それからしてそうしてのち興味が出てきたなら、カラー(色でなくて襟の型)のバリエーションだったり織柄などなど、
分かりやすい突飛な変化球に食いついていたのが恥ずかしくなるほどに奥深い、
たかがシャツ、されどシャツの世界を探求してみるのも面白いとか思うのさ。
いずれにせよとりあえずはプレーンなワイシャツの、
かえすがえすもまずサイズ。
特に首。
で、
分かりやすい突飛な変化球と言えば最後にコレ。
だいたい白いシャツならどんなタイプでも受け入れられる環境とは言え、
最近よく見るダブルカフスに主張の強いカフリンクスを組み合わせた中々にゴテゴテなアレね。
モノを知らない初心者こそがこぞって袖を通したがるいかにもなアレですが、
基本的にカフリンクスやカフスボタンはジャケットありきの袖口からたまにチラ見せするのが粋なワケで、
むき出しのシャツに常時見せびらかせる気満々のソレってのはいただけないって話。
フォーマル性の高いダブルカフスなんか選んでおいては「細けーこたーいーんだよ」なんて言い訳は通用しない。
そもそもサービスマンが着るべき服ではないし、作業従事者の自覚を疑われても仕方がない格好だし、
決して相応しいとは言えないどころかかなりのルール違反をしでかしていて、
キチンとしてるっぽい枠の中から最高に見栄えのするアイテムを選んでカッコつけたつもりが、
一周まわってスパンコールのタキシードみたいになっていることは自覚しておきましょう。
譲れないポリシーとか相当の覚悟も無いで、
手っ取り早くどっかから持ってこれた分かりやすい自分らしさに飛び付いちゃっただけなんだテヘペロ、
ってんなら素直に改めちゃえ。
人と違う立派な服をデタラメに着たおしたって意味ないの。
ありきたりの服でもスマートに着こなすほうがよっぽど難しくて価値がある。
まぁ、人の事は言えない、ってのは実は私も若い頃に、
「俺はダブルカフスにカフスボタンのシャツしか着ないぜ」
とかやってた時期がありましたんでね。
きゃあ。
ただね、意地でもむき出しダブルカフスが絶対のタブーというわけではなくて。
知り合いにもいますもん、
そこ以外の所も完全に作り込んで、美学を具現化した私はエンターテイナーだ、これはその衣装だ、
って「それだけ」に止まらずトータルで徹底して、逆に、あえて、
明確な目的のための手段としてこれを取り入れているバーテンダーも。
そこまでいけば文句は無い、
どころかそれは素敵。
「それだけ」以外も、ってことは全部を知った上で分かってなきゃできない芸当なわけだから、
なにより説得力がなきゃ意味ないから、
なんにせよやっぱり勉強が大事、ってこと。