カシス・リキュールが切れたので補充の買い出しに行ってきたのですが、
個人的にはこの辺の酒を買うのがいつも悩ましく、
活躍の場面は多いし種類も豊富だけど正直そう何本も置いとけないし銘柄指定などあり得ないカクテルの素ならば何を買ってもよさそうだからこそ何を買えばいいのさ?っていう。
なるべく美味しいのがいいじゃん?
他の地域の事は詳しくありませんが、とりあえず近所では居酒屋が酒屋に電話で「カシス一本」とメーカー指定もせずに発注すれば持って来るヤツでお馴染みのカシスと言えばコレな「ルジェ」を使っているとBarとしてどうよ?なんて冷たい視線を浴びるけど、
なぜか「フィリップ・ド・ブルゴーニュ」がぶっちぎりの大人気で、これさえ置いとけば優良Bar扱い、分かってるじゃんと頷かれてみたりする状況。
「ルジェ・ラグート社」のカシス・リキュール「フィリップ・ド・ブルゴーニュ社」製のそれ
それで他メーカーのは試してみたの?と同業に聞いてみたところで返ってくるのは「ルジェじゃなきゃあとはどれも同じようなものでしょ?」「そこ、こだわる必要あります?」なんて残念なお言葉。
誰かの「これイイ!」待ちなのねそうなのね。
そんなわけで試飲もままならないならば毎度毎回違う種類のボトルを購入してみてはいるのですが、未だ運命の出会いを果たせないまま今回巡り会ってみたりしたのがこちら。
「ルジェ クレーム・ド・カシス・ド・ディジョン ノワール・ド・ブルゴーニュ」
とりあえずド・ド・ドうっせーし長げーよとツッコミながらまずは基礎知識。
今時カシスと言えばイコール酒ぐらいの勢いで普及している感がありますが、カシスはフランス語名で英語ではブラック・カラント、和名はクロスグリ。
ちょい苦の酸っぱ系微甘ベリー類でして、収穫高世界一はポーランドだけど、これを酒にしている国となるとほぼフランスの独壇場なので逆にその他の国で作られたカシス・リキュールを見つけるほうが大変、にしてもなぜかこの類いのリキュールにしては異常にアメリカ産が少ないのには理由もあるのだけれどめんどくさいから省略。
この実を中性スピリッツの中で潰して寝かせて砂糖をぶち込んで最後に濾過する、ってのが一般的なカシス・リキュールの作り方。
日本国内で流通しているカシス・リキュールのそのほとんどが「クレーム・ド・カシス」なる名前になっているのはだからフランス産まみれの現状ゆえなのですが、
ついでに言っとけば他のリキュールでも目にする機会の多いこの「クレーム・ド・なんちゃら」はEUの規格でして、
1リットルあたり250グラム以上の糖を含有していることを表していて、要はクリームみたいにねっとり甘くて美味しいんだぜい?と謳っているのですが、
ことカシスに限っては400グラム以上の糖が無ければそうとは名乗れないため、いかにカシス・リキュールが平均して激甘なのかと知れるところ。
ゆえの人気と定番化?
糖分の気になる方はご注意を。
しかしそれもこれもヨーロッパ経由の素性正しいボトルにのみ言えることであって、
他国じゃカシス・シロップにも「クレーム・ド」とか好きに付けたり呼んだりすることもしばしばで、かと思えば全く違う名称で流通してたりするもんだから英語圏のサイトでレシピを漁ってたりすると紛らわしいイージートラップが多かったりもするけれどそれで困る人なんてそんなに居ないだろうからまぁいいか。
して当ボトル。
実は先に出た「ザ・どこにでも転がっている居酒屋カシス」でお馴染みのそれと同様ルジェ社の商品なのですが、
何気にここが世界で初めてカシス・リキュールを作った元祖のメーカーだったりするのにあまりにもかわいそうな世間のイメージと残念な評価に本気を出してみたのかキレたのか?
フランスでもカシスと言えば最良の栽培地域とされるブルゴーニュ地方の中でも最高と称えられるコート・ドール地区で収穫したカシスを用いてラベルにディジョンと発見出来ればそれだけでフランスAOCのお墨付きなのにカシスはカシスでも最高級品種であるノワール・ド・ブルゴーニュのみを使用して、
しかもそれの厳選したところの一番搾りエキスだけを使って作ってみたとかまぁ盛り込んだね?盛り込みまくったね?
と、言うならば松竹梅の松のその上を行くのっぴきならない代物はもはやカシスなんて呼び捨てにできないならば御カシス様。
以前にこれの先行試作型限定版として「ダブル・カシス」なる商品がありましたが評判が良かったのか?ふざけた値段もそのままに再び登場したのが当ボトルなんだけど、
そうなんだよ美味いんだよ美味いんだけど高いんだよ高過ぎるんだけどベース・リキュールにこれ使ってるからグラスの値段もアップしますとかは絶妙に言い難いとこなのでコスパ上々のカクテルが飲めるよ?今なら当店カシス系がお得だよ?さぁ俺をいじめにかかって来やがれ。
で、どうやって飲めばいいかなんてソーダ割りとかオレンジ割りとか?ありふれた楽しみ方でよろしいのではないかと。
そのほうが違いも分かりやすいでしょうし。
どうでもいいけど小慣れた感じを出そうと思ってなのか?Barで「カシオレ〜」なんて注文するのは逆効果だから気を付けていただきたいにしても、
ウチじゃ二年前に一度だけ「カシオレ」なる注文をいただいた際に本気で何を言ってるのか分からなくて「なんだその酒、カクテル?」と、あやうくネットで調べかけたのも今では良い想い出、
なわけない。
当たり前のように過ごしているけれど、このレールの上でバーテンダーをやらせてもらえている今にアリガトウゴザイマス。
まっ、犠牲にしているモノも多いけど、ね。