風潮
- 2015.06.03 Wednesday
- 23:23
えー、前置きとして、
最近の心境といたいましては輪をかけていよいよつくづく、
他所様が何をされていてもどうでも良いのですよ実際は、ってこと。
私にできるのは知らずにやってるけど実は知りたいって人に知っていただくきっかけを、
おこがましくも知らせてあげる的な、
なにやら偉そうな物言いではありますが、まぁそういうこと。
あとは微々たる信念と大いなる女々しさゆえに、相も変わらずこんな駄文を書き連ねてみちゃあいるけれど、
どうでもいいのだよなぁホント。
嫌味でなくね、勝手にしなよ?俺も勝手にほざいてるだけなんだからさ、知ったところでどうするかも自由なんだからさ、っていう。
私にもアナタにも、何処にも正義なんてありはしないのだから。
さて、
「おしぼり」に関するクレームが二・三件続きました、
とは言っても当店のことじゃないから私に言われたってどうしようもないのだけれども、まぁとりあえずお話。
まずは漫画「江戸前鮨職人・きららの仕事」第八話から引用して、
って、ねぇ?漫画の引用多いよね?ヲタクとか思われてんのかな?いっけどさ。
食通のジイサンが老舗寿司屋にやって来て、おしぼりで顔をワシワシ拭きながら、
「うーん、ミツさん(寿司屋の女将)のおしぼりは実にいい香りじゃ、ひとつひとつ手で洗わなければこんないい香りにはならん」、
てなことを言うシーンがあるのですが、まぁこういう判断基準であり判定基準がそこ、ってのが一般的ではあるのでしょう。
うわ、引用するほどのことでもなかった?っていうこのやり取りに一つケチをつけるならば、「洗う手間はいいけどさ、出す手間の方が重要なワケで、その描写はまるまる省略してるけど、ねぇ本質的なところは分かってるの?」って。
「おしぼり」ってのは水分を含んだ濡れタオルであって、最大の問題は衛生面。
腐敗とは雑菌の繁殖によって引き起こされるものであり、水を含むモノはすべからく危険をはらむゆえこれに注意すべし、ってのは飲食じゃなくったって衛生管理の大原則。
冷すにしたってそうだけど、いわゆる「おしぼりウォーマー」なんて機械に入れといて温めておくならばなおのこと、雑菌を光の速さで培養するのと同義なわけで、
洗う手間なんかさほどではなく、
実際、清潔を第一に考え「いい香りのおしぼり」を提供しようとなると、
氷水かお湯、それに乾いた状態の清潔なタオルを常に用意しておいて、お客様が来られるやいなやそれを浸し、文字通りおしぼりしてお出しする、
てかまぁ、そもそもだから「おしぼり」って言うのだし、そういうモノなんですけどもね。
これが清潔指向と文化レベルの向上、そこにいかにも日本的と言うか、おもてなし精神が加わった具体的アプローチとして、
ええとこの飲食店では「おしぼり」を出すのが当たり前、となったのは戦後のこと。
ハードル高めの手間仕事が常識化しちゃってさぁ大変。
もはや手作業でのやりくりが困難となった状況に、これはビジネスチャンスと目をつけた業者が誕生、
しただけじゃなくて、ここ、もう少しダーティーな裏話もあるのだけれど今回はスルー。
現在に至りましては飲食店で使用されている「おしぼり」のほとんどが貸おしぼり業者から仕入れたレンタル品、っていう状況。
徹底除菌された上に繁殖を抑える仕様なので半日ぐらいなら温めっぱなしでも使用できる優れもの。
どこでも誰でも、手間をかけずに清潔な「おしぼり」を提供できるようになりましたとさ。
で、先の漫画に立ち返れば、その辺まるっと分かっているなら「ひとつひとつ手で洗わなければ」よりも「ひとりひとり来客するたび手で絞らなければ」となるだろうに、は置いといて話は冒頭、
「クレームってのはこのおしぼりが臭いとか言うんでしょ?」と閃いた方はご明察、
なのだけれどもその内容はちと変化球。
一昔前なら塩素系の消毒薬臭いおしぼりも珍しくはなかったけど、技術も向上し、厚生労働省が設定した衛生基準をクリアした今時の「おしぼり」が臭かったとしたら理由はだいたい以下の通り。
1・必要数の逆算もせず詰め込めるだけウォーマーに詰め込んだ「おしぼり」が宵越し状態となって殺菌効力が失われ雑菌が繁殖し放題にも関わらず、そのまんま翌日だったりそのまた翌日っだったりにまで使いまわしたりするもんだからで臭い。
2・業者の「おしぼり」を使用しないで自分のところで手洗いなんですよ、はいいのだけれど、結局冷蔵庫なりウォーマーで待機させ、事実上濡れたままの放置状態ならそうでなくとも家庭用洗剤レベルの洗濯でとか、そりゃ臭くて当たり前。にしてもこのケースで怖いのは店の人が生臭かったりカビ臭いのに慣れ過ぎてもはや異臭を拾えないぐらいマヒしちゃってることが多いのよね。
そして、
3・いい匂い臭い。
と、今回あったクレームはこの3であり、昨今当たり前になりつつある、流行りと言うかなんと言うか、
私は「押し付け気遣い」とか「ドヤ顔サービス」と呼ぶ一方で、
稼ぎたいだけなら賢い選択とも認めつつ、
でも大概の場合はモノを知らないド天然が綺麗事を口にしながら優れ者気取りなもんで不愉快なんだけど、
なんせいかにもでしょ?いかにもなそれが手間もかからず明日から実践可能とあれば「じゃあウチも」と感染力は抜群で、
今時「おしぼり」にいい香りを後付けして出す、ってのはデフォになりつつあるのです。
方法は簡単。
業者の「おしぼり」を使用してお客様にお出しする直前、何かかけるだけ、っていう。
これがですね、アロマオイルの一振りや何かしらのピール程度ならまだしも、
趣味でもない香水やらドギツイ柔軟剤やら、なんならファ○リーズをまんまとかぶっかけて寄越してくれるもんだから、
え?飲み食いしに来てるのに手元にこんな匂い邪魔なんですけど?臭いんですけど?なんか色々台無しなんですけど?お前は気にならないの?お前こそが気にするべきじゃないの?わぁ手に着いた匂いが取れないのですけれどもー?けれどもー!?
って場面は私も実際経験したことがあるある過ぎて困りものだけど、そういうクレーム。
でもね、
けどね、
テメーでその「おしぼり」使って飲み食いしたことあるの?
あのさ、この手の匂いが嫌な人はガチでムリだよ?
てかさ、スメハラはなにも悪臭だけに限らないとか、ちょっと前にも話題だったじゃん?
出したてにちっとばかし消毒薬臭い「おしぼり」だったとしても揮発性が高いそれがずっと臭うなんてこたないけどねぇ。
しつこくつきまとう香りをそれでもあえて選択する貴店はいったい何屋で何を主旨とした店なのだろう?
最良のサービスとか言いたいなら工程はしょった誤魔化しみたいなことせずに全部キチンとしろよ?
昔ながらに言う良い香りのおしぼりってのは「残り香のするおしぼり」であって、そこに行き着くまでの工程と直前のわざわざこそが「気持ち」であり「仕事」であり「価値」であり「意味」でしょ?
文字通り取って付けてどうすんの?
つーかさー、マジでさー、こういうとこに気がまわらないでさー、むしろイイネ!とか言えちゃうような神経なら向いてないんじゃない?飲食、アハ、どうでもいいとか言っといて止まんないよ?アハ、アハハハハハハハハハ!
とかなんとか問うたって仕方がないのですよ、これが。
パフォーマンスで良いのですもの。
いや、きゃつらの大半はこれが最上級とか思ってそうで怖いけど。
香り付きのおしぼり=いいサービス。
香りが無いおしぼり=気が利いてない。
そんなモノサシしか持ち合わせていない、良く言えば被害者であり無垢な?人達のウケだけを狙うのであればそれで充分なんですもの。
世界はね、世界に住む人々の基準と願いを具現化したカタチ、それそのものなのですよ。
あれ、水にレモンが入ってると喜ぶみたいな、
おつりが封筒に入ってたら嬉しいみたいな、
チャージ取られてサービス料も取られて、それじゃ割りに合わない程度の謎オマケを押し付けられても、とにかく他と違うナニカさえ得られりゃご満悦ってな具合。
内容なんざどうでもよくて。
多分ウチの方こそ言われてるんじゃないですか?
「あそこのおしぼり香りがしなかったねーダメだねー分かってないねーいいBarのおしぼりは香り付きなんだよー」とかって。
じゃあウチでもやればいいじゃん、って?
絶対ヤダ。
優れてるとは言わないけれど、俺の鼻はバカじゃないし、
今回みたいな話がウチで出たってことは、飲み食いを大事にしてて本質的なとこの目利きもできるお客様にお越しいただけてるってことでしょ?
ならそれが何よりですもの、さ。
マイノリティーだっていいじゃないか バーテンダーだもの
好きにしろとは言ったけど自覚はしろよ?
オマエは誰かの築いた足場の上でこれを切り崩しながら、善くも悪くも今を変えようとするような、
そんな動きに少なからず加担しているのだということだけは。