腐りて堕ちる。(後)
- 2016.02.06 Saturday
- 02:49
それでいったい「自家熟成ウイスキー」の作り方とはいったいどのようなものなのか?
個人の生活を脅かすつもりまではないので直リンを張り付けるようなマネはしませんが、その方法はいたって簡単。
ウイスキーを買ってきて、未開封のまま、どこぞに放り込む。
例えば池の中、あるいは土の中、はたまた泥でくるんで、とか。
できるだけ衛生観念を無視した不潔な場所をあえてこぞって選んでいるような気もするけど、
これを放置しておいてウン日・ウン年経ちますれば完成にござい、と。
そんなモノを客に飲ませている店がある、
なんてこったい驚いた!のも最初だけで、
いや、慣れちゃうのもどうかとは思うけど、今さらですよね?この程度のこと。
自家製酒が売りでフルーツがオススメでスイーツ作りに精を出しスタンダードには成りえない作ってみただけのオリジナル・カクテルを喜々として量産して、
除菌までしてダニをも殺す掃除機が売れて経口摂取でヒアルロン酸もコラーゲンも補充されてマイナスイオンに癒されてプラズマで消臭までできて水素水で元気になれちゃうこんな世の中ですもの。
リアクションとしての瞬間的な激情が赴くままに書き始めはしたものの、
そもそも乗り気でない、冷静になるほどにどうでもいい、果てしなくくだらないこのお題をいたずらに日を跨ぎつつ時間をかけて書いてる内に中々の風邪をこじらせてしまい、
この一週間を三途の川の水面を反復横飛びし続けては時折うっかり向こう岸で過ごしていたおかげでずいぶん熱も冷めました暁には、
その最初にあった感情の、あの時抱いた憂いと想いの、それだけ記してさっさとこんな記事は終わりにしてしまいたいのです。
もういいのです。
病み上がりを言い訳にたまにはクサイ話を恥ずかしげも無しに、
そしてこれはあくまで個人の思想と前置きをしつつ、
バーテンダーの仕事とはなにか?
サービス面だ接客としてのどうのはさて置き、
とりわけ技術的・技能的な職人としての立ち位置と役割、業務内容について。
私が思うには酒のプレゼンにあっても特に飲み方について熟知して、これに従事する、
言わば仲介者にして紹介者だと考えているのです。
カクテルを作る、にしたってこれは一つの飲み方の提案であって、あくまでも人様が作られた酒の良さを利用・活用させていただくお仕事だと。
例えるならば音楽。
ボトルは誰かが作った曲であり、お客様からするとそのままでは難解な譜面に過ぎないとするならば、
リクエストに応じて曲を紹介するその際に、よりニーズにそった演奏をしてプレゼンする。
その手段がカクテルを含んだ様々な飲み方の提案であり、
瞬間、我々は、少し大げさに言うならば演奏家にして表現者として、その役割を果たすのが使命なのではないかな?と。
然るに開封前のボトルにアプローチをしてこれが私のオリジナルであるとする「自家熟成」とは何なのか?
もうね、本当に熟成してるの?とかもどうでもよくて、
文字通りラベルを張り替えるかのごとき行為はまるで盗作、あるいは冒涜、はたまた愚弄ではなかろうか?
バーテンダーは作曲家ではない。
編曲家でもないし評論家でもない。
あくまでも演者であるべきなのではないかな?と。
もはや定番としていよいよのっぴきならない事故でも起きやしまいかと不安感がとどまることを知らない自家製酒の類もそうだけど、
何をロクに演奏もできない連中が人様の仕事を横からさらって「オレの曲だ」などとほざいているのだろう?
目的が分からないのだなぁ、もう。
酒を創造したいのなら酒造メーカーに勤めろよ?
フルーツの良さを広めたいならフルーツ屋さんになればいい。
それでまたことごとくズレてるし美味くもないよなぁ?そんなハンパな仕事じゃ。
それ以前に安全性よな?
バーテンダーはただ、美味い酒のプレーヤーを目指すべきではないのか?
それだけで手一杯のはずなのだけれどもなぁ?
と、そんなことを思ったりしたのでした。
いや、しかしあらためてやっぱりスゴイよ。
池の中に一年放り込んでおいたウイスキーを引き上げて飲ます、とか。
出す方も出す方だけど飲む方もどうなのさ?って。
バーテンダー関係なく言っとくね?
ダメだよ?そんなもん口にしちゃ。
常識に縛られない?
常識を疑う?
いや、まず常識を身につけましょうよ?って話しでした。