マンチーノ・ベルモット「キナート」
- 2017.05.01 Monday
- 01:21
まずは復習。
その最初期は薬効を期待して。
ワインに香草等を漬け込み飲用していたとする文化は世界各地で見受けられますが、その歴史は古いものになると紀元前にまで遡ります。
1786年、既存の風習を参考にしつつも斬新にして独自の製法が生み出されたのがイタリアはトリノでのこと。
これをドイツ語で「ニガヨモギ」を指す「wermut」に由来して「vermouth」と名付け、商品として確立させ売り出した最初の人が「アントニオ・ベネテッド・カルパノ」さん。
で、ご覧の通りの「vermouth」をあえてカタカナ表記するなら「ヴァームース」が近そうなものの、
なぜか日本では「ベルモット」と、
昔から識者が「ベルモットて言う人が増えてますけれども違うよ?」とツッコミ続けてきたにも関わらず、
なぜか日本では「ベルモット」と、
無勢が多勢に押し切られて定着してしまいましたとさ。
そんなわけでイタリア生まれの「ベルモット」。
誕生したてこそ現在で言うところの「スイート」とか「ロッソ」と呼ばれる甘くて赤い(原料はあくまで白ワイン、色は香草由来と着色)バージョンしかありませんでしたが、
後にフランスでこれより甘さを抑え、色も無色に近い「ドライ」が作られだしてからは、
ベルモット界においては赤のイタリア、白のフランス、
「IT(イット)」とだけ言えば、それは必然イタリア産スイート・ベルモットを指し、
「フレンチ」と伝えたにも関わらずフランス産ドライ・ベルモットと解せなかった暁には、皮手袋で両頬をシルブプレされても文句を言えません。
もちろん現代では、イタリアで言うところの「ロッソ」に当たるフランス版の赤、スイートの「ルージュ」もあれば、
フランスで言うところの「ドライ」たるがイタリア産の「セッコ」「ビアンコ」と一通りがありますが、
いずれにせよ、
「ダメだダメだ!近頃のベルモットはなっちゃいないぜ!オレが本当のベルモットを見せてやる!」
と登場したのがイタリアのカリスマ・バーテンダー「ジャンカルノ・マンチーノ」さん。
2011年にオリジナル・ブランドを立ち上げてベルモットの製造・販売を開始したのですが、
だってこんな、
「やだ、すごく注いでる///」みたいな写真からもうかがい知れるとおり、
いかにも私が苦手とする方向性のパフォーマンスこそがむしろ大好きそうにしか見えないバーテンダーさんの、
しかも流行りのいわゆる「クラフト系」なわけじゃないですか?
と、ずっとスルーしていたものの、
この度新しく登場したボトルには、だがしかし好奇心が勝ってしまって購入してきたのがこちら。
マンチーノ・ベルモット「キナート」
最初からリリースしていた「セコ」「ビアンコ」「ロッソ」、三種のベルモットをブレンドした上に「赤」ワインを加え、さらにみんな大好き「キナ」の風味を強化したボトル。
当店の、優しめ甘・ウマ系香草リキュールフェチさんに人気な「キナ・キナ」の、
これの低アルコールっぽい感じだったらいいなぁ?(キナ・キナは40度、キナートは17.5度です)
と目論んでみたら、まんまそんな感じでしたから美味しいです良かったです。
しかしベルモットではないよな?もはや。
ところでちなみになんですが、
「セコ、ビアンコ、ロッソ 3 種の濃縮液に更にキナ(キニーネ)とレッド・バルベラ・ドゥ・アスティ DOCG を加えた。」(原文まま)
と、メーカー様から酒屋さんからバーテンダーまでもが揃いも揃って同じご解説をされているあたり、
相も変わらずコピペでヨーソローなのでしょうけれども、
なんですか?
はたして「なんの説明」をしているのか?
私には意味がわからないのですが、
特に「レッド・バルベラ・ドゥ・アスティ」て?
どこの国の言葉ですか?
ねぇ?
ナニが加えられてるって?
さては全力で分かってないんでしょ?
イタリアの赤ワイン「バルベーラ・ダスティ」のことでしょ?
さすがに酷いよ?
ソムリエじゃなくたってだよ?
さすがのさすがにレベルがアレだよ?
100均に転がってそうな不自由すぎる日本語の説明書きが添えられた中国製文房具かよ?
理解が無いなら説明なんかしちゃダメなんだよ?
それはもう、ただの嘘だからね?
解ってないんだもん。
なのに教える?
は?
だからなにを?
気付いて当然の違和感さえも平然とスルーしてしまう程度の器で人様にものを説いているような連中がプロなんだもんなぁ、
この業界。
お咎めもなく。
叩かれて避けられてはむしろコッチだったりするわけで。
はぁ・・・。
しかして数年後、
Bar業界においては「バルベーラ・ダスティ」のことを「レッド・バルベラ・ドゥ・アスティ」と呼称するようになるのであった。
「ヴァームース」が「ベルモット」と呼ばれるように。
ってことか、
なるほどね。
みたいなことをさー、
おこがましいながらも?
警鐘と啓蒙?
ずっと書いてきたつもりだけど、
結局なにも変わらないし、
伝わりゃしないのよねぇ、
きっと。
あぁ、
無力。