購入の動機としては主に以下の3つ。
1「だって若いブランドだから」
当該ボトルは2009年設立と、まだ比較的新しいメーカー「メドウサイド・ブレンディング」が先んじて世に送り出していたシングルモルトの厳選シリーズ「ザ・モルトマン」に次いでこれのグレーンウイスキー版とし、2016年より発売を始めたフラッグシップ的シリーズ「ザ・グレーンマン」の内が一本である。
すなわち草創期にある会社が打ち出した新機軸なればこそ本領か、もしくはそれ以上の力が発揮されている可能性が高いことを私は知っている。
これはなにもボトラーズブランドに限った話ではない。
同一のシリーズにあっては以降に続くラインナップの内、その最初期こそが得てして最も優れていた、とは後々になってよく聞く話だ。
ジオンのザク然り、連邦のガンダム然り、歴史もそれを証明している。
購入時の決定打でなくとも加点の材料には十分なりえるのだ。
おふざけ無しで、存外侮れないリスク回避の一要因と思っています。
2「角度と価格が絶妙」
モルトではなくグレーンだからこそのお求めやすさだが、これはもう低価格と言って過言でない設定の割にしっかり長期熟成で、言うてもカンバスの、しかも三樽を用いた熟成だなんてそそる変化球要素まで付随しては興味マシマシ。
渋いチョイスに憎い仕様。
そこに痺れる憧れる。
3「そう囁くのよ、私のゴーストが」
これは美味い。
そう思った。
一発直感インスピレーション、カンピューターがスイッチオンしたのだ。
もちろん最終的には諸々の情報を下敷きにした上での判断ではあるが、それ以前に一目惚れに近いニュアンスをして初見でこのボトルの画像を見るやいなや。
ウイスキーなるを見た目で、ましてやモニター越しの写真のみで判断するはいかにも分が悪い博打である以前に愚かな行為であることは百も承知の上、
だが、
しかし、
画面を通してもわかる、この単純に濃いだけではない赤みと深みを伴った得も言われぬ輝きは人為的な操作だけでは再現不可能な、
当然のごとく注がれた不可欠な必然に支えられてもまだ約束されない、偶然と永い時間に祝福されてのみ初めて織り成すことのできる複雑なテクスチャーによって構築された色彩のアレがソレでファンタスティックにマーベラス。
経験に基づいて形成された勘はオカルトのそれとは一線を画したある種の統計であり、組まれた公式と、それに伴う計算によって導き出された閃きという名の解は決して運任せの場当たり的な選択ではないのだ。
と、信じたい。
そんなこんなで仕入れてみたのがハイこちら。
メドウサイド・ブレンディング「ザ・グレーンマン カンバス28年1990 トリプルカスク」
元ハート・ブラザーズ社のドナルド・ハートさんが息子と立ち上げた新会社からリリースしたのはイケてるグレーンのみをラインナップに掲げる「ザ・グレーンマン」のシリーズより、今は亡き「カンバス」の28年モノをポート、シェリー、バーボンの三種の樽で熟成させたという、どこぞのチーズ牛丼もビックリの一本。
世界的なウイスキー狂乱の直中にあって賢い人達にはとっくに目をつけられているけれど卑しい連中にはまだ汚されていないので、比較的良心的な値段でいただける長期熟成グレーンを今、狙い目と言わずしてなんと言おう。
四の五の言いましたが、で?結果は?美味かったの?
については、正直なところ個人的には好みでなかった点も踏まえて文句などあろうはずもなく思った通りに美味でした。
いえ、趣向性は別の話ですからね。
ベースとなる酒質は繊細の極みで全てを拾うにはやや難易度高めにしたってとにかく樽感がスゴイからにはそれだけでも満足できちゃう。
バーボンも居る、ポートも効いてるけど、特に長期熟成の上質なシェリー感が圧倒的なら、それ系がお好きな方にはたまらない系。
てな方向性です。
このご時世でも「それなりの」ウイスキーを気兼ねなく愉しみたい、試してみたいとあらば、総合的に平たく言ってまぁオススメ。