ニセモノなのカモ。
- 2020.02.05 Wednesday
- 21:20
先日、お客様との会話の中に出てきたのは「ルディのワイン」のはなし。
2016年には英国でドキュメンタリーとして映画化までされた「事件」をどうして今頃?
とはいえ日本向けに特化した情報となるとこれまでは乏しく、
どうやら最近になって日本人の手により日本語で書かれたとある書籍をきっかけにしてようやくチラホラ話に上がるようになってきたみたい?
ということはむしろ逆に今こそが旬らしいし、そういえば当ブログからすると若干の畑違いということもあってスルーしていたのだけれども、
なにしろ今さらなんてことはない、周知されるべき内容ですからというわけで、
その事件とは、
2000年代の初頭、アメリカのワイン社交界に彗星のごとく現れた謎の青年「ルディ・クルニアワン」くんときたらオークションに出品されたやんごとなきボトルの数々をのっぴきならない金額でがっすんがっすん落札していくもんだから、素性のほどはよくわからんがとにかくすごいセレブだ、と持て囃されて一躍有名人に。
数々のパーリーに招待されては通も舌を巻く博識っぷりと確かな鑑定力を披露してはいよいよこやつは本物だ、違いの分かる男だと太鼓判を押されたあたりから自身のコレクションを開放するよ、とえげつない所蔵ボトルの数々をオークションに出品するようになりました、
ものの、
やがて、
しだいに、
おや?これフェイクなんじゃね?
ん?これも偽物じゃん?
あれれー?おかしいぞー?
とボロがぼろぼろ。
たまさかでは済まされないほどに相次ぐ偽物の出品は計画的犯行と判明し、最終的にはFBIが動く大事件となり、2012年に彼は自宅で逮捕されるに至りましたが、現場はもうちょっとした偽造工場の様子でしたとさ。
被害総額は120億円超。
ワイン史に残る大偽造事件、
で終わらないのがこの話の怖いところ。
なんだ8年も前に逮捕されてるんじゃん、
じゃない理由とは、
被害総額の120億円ってのは具体的な被害者ありきの明るみになった実損分のみであり、一説によると金額でいえばこれの約5倍、末端価格にして600億円相当の偽造ボトルが、主に仲間の内でも逮捕を逃れて今だに香港辺りで豪遊しているとかいうふざけた噂が聞こえてくる彼の兄の手を介してアジア圏の、とりわけ日本ですでにとっくに流通しちゃっている可能性が極めて高いってんでさぁ大変。
今ね。
今の今。
NOWなの。
大変?
言うほど騒いでないどころかあんまり話題にもなってなくね?
っていう危機感の無さが大変だと言っておるのだよ。
だから!遅すぎたと(ry
で、
話の流れとして、
ここから、
「ウイスキーはさ、大丈夫なの?」という会話というかご質問をいただいたわけですが、
個人的見解としては一言でいうとそらもうとっくに「ヤバイ」と思っております。
ウイスキーも。
いや、
ウイスキーこそ、
かな?
して、
事がウイスキーとなるとそれ系のネタは以前にもここで書いた覚えがありますが重複御免でさらさらっと書き連ねれば、
2017年、世界有数の品揃えを誇りギネスにも登録されている由緒正しきスゲーBarで1番高いヤベーモルトを注文してみたらまさかの偽物だった件、スイスはサンモリッツで起きた「バルトハウス事件」。
同2017年、高級バーボンで知られる「パピー・ヴァン・ウィンクル」の偽造をしていた男が起訴されましたが、これを含む対フェイクボトル予算として大元である「バッファロー・トレース」が投じた金額は1年間だけでおよそ50万ドルだなんていやちょっと待て、そもそもどんだけの規模の敵と対峙してるんだ?とオレの中で話題に。
2018年にはウイスキーの鑑定や仲介販売を行う英国の「レア・ウイスキー101」がスコットランド大学連合環境研究センターと共同でマニアから酒棚からオークション出品物からと無作為に入手した55本のオールドボトルに対し、放射能性炭素年代測定なる信頼性の高い方法で鑑定してみたところ、内21本は明らかな偽物と判明。
同年、日本でもフリマアプリを利用して中身を入れ替えたサントリー響30年を販売し99万円の利益を得ようとした男二人が商標法違反と詐欺の疑いで逮捕されたというニュースがありました。
それでなくともオークションサイトでは何の目的で使うのやら?ウイスキーの空き瓶がわんさか出品され続け、これがわりかし律義に落札されているのは日常ごと。
日本ではあまり報道されていませんが東南アジアを中心とするウイスキーの偽造グループの摘発は規模の大小はまちまちなれど、これまた珍しくもないお話し。
しかもこの辺になってくると特に高額だのヴィンテージモノってわけでもなく、現行のスタンダード商品まで含まれてくるからね、もう、ね。
まさにウイスキー「こそ」じゃない?
質といい量といい幅といい。
最近のことだけ、ほんの一部を拾ってみてもご覧の有様。
実際、実質、今現在、偽物ウイスキーがとっくに市場に出回り、身近なところに転がってしまっているのは、もはや揺るぎない事実なのです。
だからどうしろと?
いえ、まぁ、気を付けてね、としか私は言えないわけですけれども。
ただ、
冒頭の偽造ワインの話し。
ルディがアメリカで事を始めるにあたって最初のターゲットに選んだのがロサンゼルスはハリウッド近郊のワインコレクター達。
その理由については、その、なんつーか、「ハリウッドのwwwセレブ様とかwwwワインわかんの?wwwチョロいっしょ?www」と踏んだからだろうね、って言われてる。
まぁ、言われちゃってる。
そして、
事件解決にも貢献したワイン界のシャーロック・ホームズこと鑑定家モウリーン・ダウニー女史は、未だ市場を彷徨う偽造ボトルの行方について、
「日本て国は偽造ワインに対して危機感というか警戒心が無さ過ぎじゃない?だからちょー心配」とおっしゃっている。
今、何が起きているのかを、せめて知り、そして把握しておくことは、それだけでも大事なことだと思いますのよ。
全体の意識の底上げが抑止力にも予防策にもなり得るのですから。
え?当座の自衛手段?
近々のところは信頼のおけるプロにお任せしておこう。
信頼のおける、
ね。
それをまたどうやって見つけりゃいいのさ?って話になるのでしょうけれども、
とりあえず偽造ワインにしろウイスキーでも「今、大変なんでしょ?」と聞いてみたらば「なにそれ?」なんて返ってくるようなところは、その時点でアウトなんじゃね?
と、思います。
- ぽつり
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